関連する相談例:派遣会社から派遣料金の値上げを提示されたが、妥当性を判断できない
はじめに
派遣社員を受け入れている場合、派遣会社から派遣料金の改定を相談されることがあります。派遣料金の改定は、派遣先企業(以下、派遣先)にとってはコスト増につながるため、簡単に判断できるものではありません。一方で、派遣会社や派遣社員の側から見ると、求職市場での賃金水準の変化、社会保険料率の改定、人材確保の難しさ、業務内容の変化など、さまざまな事情が背景にある場合があります。
派遣料金の改定と聞いた場合、「その分、派遣社員の時給が上がるのか」と考えがちですが、そうとは限らないのが実情です。派遣料金は、派遣社員の時給だけでなく、社会保険料、有給休暇、教育訓練費、求人広告費、派遣会社の運営費などの原資となっているためです。
本記事では、派遣料金の値上げ交渉と時給への反映、交渉時に確認しておきたいポイントについて解説します。
派遣料金の値上げが派遣社員の時給アップにつながるとは限らない
派遣料金の改定交渉において、派遣先が最初に確認したい内容は、「改定された金額は派遣社員本人の時給に反映されるのか」という点です。派遣社員の日頃の勤務態度を評価している場合、派遣社員の時給を上げるための改定であれば、派遣先としても前向きに検討しやすい側面があります。一方で、派遣料金だけが上がり、派遣社員本人の時給は変わらないのであれば、改定が必要な理由を踏まえ、慎重に考えたい場合もあります。
ここで注意したいのは、派遣料金と派遣社員の時給は同じものではないということです。派遣先が派遣会社へ支払う派遣料金には、派遣社員へ支払われる賃金だけでなく、社会保険料、雇用保険料、有給休暇、教育訓練費、求人広告費、派遣会社の運営費などが含まれています。そのため、派遣料金が上がったとしても、その全額が派遣社員の時給に反映されることは基本的にはありません。派遣社員の時給を一定額引き上げるためには、社会保険料などの負担も考慮する必要があるため、派遣料金としては時給上昇分以上の改定が必要となる場合があります。
派遣料金の値上げ交渉が行われやすいタイミング
派遣料金の改定交渉は、突然行われるわけではありません。実務上では、一定のタイミングで相談が行われることが多いです。代表的なのは契約更新のタイミングです。派遣契約を更新する際に、派遣会社から「次回の契約から派遣料金を見直したい」と相談されるケースです。
また、就業開始から一年経過後、二年経過後などの就業期間の区切りで相談が入ることもあります。長期間就業している派遣社員については、業務への理解が深まり、就業開始当初よりも職場に貢献していることが多いため、派遣会社側から処遇改善を理由に派遣料金の改定を相談される場合があります。
その他にも、担当業務が変更された場合、責任の重い業務を任せるようになった場合、派遣社員本人から時給に関する相談があった場合、賃金相場が上がっている場合なども、派遣料金の見直しが入りやすいタイミングです。派遣先としては、派遣料金の改定交渉が入った時点で慌てて判断材料を揃えるのではなく、日頃から派遣社員の就業態度、業務の処理状況、職場での貢献度、契約条件などを整理しておくと、妥当性について客観的に判断しやすくなります。
派遣先から見た派遣料金の値上げによるメリット
派遣料金の改定は、派遣先にとっては単純なコスト増に見えます。しかし、状況によっては一定のメリットがある場合もあります。まず、派遣社員の継続就業につながる可能性があります。職場に慣れ、業務理解が進んでいる派遣社員が継続就業することは、派遣先にとって大きなメリットといえます。新たに派遣社員を受け入れる場合は業務レクチャー、引継ぎ対応、必要な教育の実施などの負担が発生するため、実際にどれくらいの負担が発生するかを想定することも有益な判断材料といえます。
また、派遣社員本人のモチベーションの向上につながる場合もあります。特に就業開始当初よりも業務処理能力が向上している場合や、職場内で頼られる場面が増えている場合には、処遇面の見直しが継続就業や定着に影響することが考えられます。
関連コラム:派遣社員の交代を検討する際の進め方と注意点
派遣料金の値上げ交渉は継続的に行われる可能性がある
派遣料金の改定は、一度対応すれば終わりというものではありません。一年前に改定したにもかかわらず、再度、派遣会社から改定に関する相談が入ることもあります。社会保険料率の改定、求職市場の変化、最低賃金の改定、派遣社員本人のスキル向上など、理由はさまざまです。
派遣先としては、「また改定か」と感じることがあるかもしれませんが、派遣料金は永続的に固定されたものではなく、雇用情勢や求職市場の影響を受けるものであると認識しておく必要があります。料金改定そのものを善悪で判断するのではなく、その都度、理由と妥当性を確認することが大切です。
関連コラム:派遣契約の更新・終了|判断基準と派遣会社への伝え方
関連コラム:派遣社員を直接雇用に切り替える際の確認ポイント
派遣料金の値上げに応じない場合の派遣会社への対応
派遣料金の改定に関する相談を受けた場合、必ずしも応じなければならないわけではありません。改定することにより、予算オーバーに陥る場合や、費用対効果の点から派遣社員の受け入れが困難になる事態などは避けなければなりません。
また、派遣社員は派遣契約に定めた業務を担当する社員という位置づけのため、就業開始当初から業務内容が変更されていない場合や当初の期待値どおりの働きぶりなどの場合は、改定を行わないことも選択としてあり得ます。
しかし、派遣会社としては、就業中の派遣社員の評価や勤務状況を理解したうえで交渉を行っていると想定できることから、改定に応じない場合は可能な範囲で明確に理由を伝えることが大切です。可能な範囲で明確に伝えることにより、伝えた内容が派遣会社から派遣社員へのフォローに活かされ、派遣社員の働きぶりが良くなるといった可能性が生じます。派遣会社としても今回は料金改定には至らなかったが、結果的に派遣先の評価を確認することができ、派遣社員のパフォーマンスも向上した、というメリットを得る可能性もあります。
なお、派遣会社への伝え方としては次のような内容が考えられます。
- 現時点では業務内容に大きな変更がないため、今回は現行料金での継続を希望する
- 働きぶりは期待どおりだが、改定するまでには至らないため、次回契約更新の際に判断したい
- 予算上、すぐの改定は難しいが、事情は理解したので、その視点で働きぶりを確認するようにします
- 新たに~の業務を担当していただけるのであれば、検討したい
派遣料金の値上げ交渉を受けた際に確認しておきたいポイント
派遣料金の改定を受け入れるかについては、客観的な材料をもとに検討することが重要です。主な確認ポイントは次のとおりです。
- 改定の理由は明確に説明されているか
- 派遣社員本人の時給改定を目的としたものか
- 社会保険料や求職市場など、外部要因による改定か
- 現在の業務内容は、契約当初から変化しているか
- 業務量や責任を持つ範囲は増えているか
- 派遣社員のスキルや貢献度は期待通りか
- 今後も継続就業を希望する人材か
- 代替人材を受け入れる場合の教育・引継ぎ期間はどの程度必要か
- 同じ職場内の他の派遣社員とのバランスは問題はないか
- 自社の予算や費用対効果として妥当か
- 今後も継続的な料金改定が発生する可能性はあるか
まとめ
派遣料金の改定交渉は、派遣先、派遣会社、派遣社員の三者が関係する内容です。そのため、派遣料金の改定を受け入れるかどうかについては、感情論や改定する金額だけで判断するのではなく、派遣社員の就業状況や働きぶりに対する客観的な評価、職場での必要性、今後の継続予測、確保している予算などから総合的に判断するのが望ましいといえます。
派遣料金の改定や、派遣社員の処遇に関する対応について判断に迷う場合は、必要に応じてご相談ください。
