はじめに
※個別の契約内容や雇用関係などによって、対応が異なる場合があります。実際の判断においては契約書や派遣会社との取り決め、専門家へ相談することをおすすめします。
就業中の派遣社員が何らかの事由によって就業が困難となり、別の派遣社員と交代することは珍しいことではありません。派遣社員の場合は、雇用元の派遣会社との間で無期雇用契約ではなく、有期雇用契約を結んで就業している場合が多く、有期雇用の場合は契約更新の繰り返しとなるため、契約期間が短いほど、更新するかどうかを判断する機会が多くなります。
更新確認の機会が多いことは、派遣先企業(以下、派遣先)が更新を希望したとしても、派遣社員が更新を希望しない可能性があることから、見方によってはデメリットと捉えることもできますが、一方では、派遣社員のスキルが不足していることによって業務に支障が出ている場合や、派遣社員に依頼している業務量が減少傾向にあるため、依頼する必要がなくなる場合などを考えた場合は、メリットになる可能性もあります。
本記事では、派遣先が就業している派遣社員の交代を検討する際の進め方と注意点について解説します。
派遣社員の交代は原則として派遣会社と相談して進める
派遣先は、派遣会社との労働者派遣契約に基づき、派遣社員を受け入れています。注意したいのは、労働者派遣契約は「特定のAさんを派遣する契約」ではなく、契約で定めた業務について労働者派遣を受ける契約であるという点です。そのため、派遣先が「Aさんを外して、別の人にしてほしい」といった形で、特定の派遣社員を直接指定するような伝え方は避ける必要があります。
また、交代を相談する場合は「契約で予定された業務を遂行できているか」「必要なスキルを満たしているか」「職場にどのような影響が出ているか」といった客観的な事実をもとに、派遣会社に相談することが必要です。
一方で、派遣契約で予定されている業務について、就業している派遣社員のスキル不足などによって対応することができていない場合は、交代を含めた対応を派遣会社に相談する必要があります。
たとえば、英語と日本語の同時通訳業務を担当するために派遣された社員の英語力が不足しており、契約で求められる通訳業務の遂行が難しい場合は、派遣契約を履行できない可能性が高いと判断できます。交代を相談できる代表的な場面としては、客観的にみて業務を遂行できる能力を有していないと判断できる場合や、能力を有しておらず、かつ必要な能力を短期間で身につけることが期待できない状況にある場合です。
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勤務態度や職場への影響を理由に派遣社員の交代を相談できるか
派遣契約に定めた業務を履行できないため、派遣社員の交代を相談することは客観的な事実があれば可能といえますが、業務をこなすスキルはあるものの、勤務態度や職場内での言動、関係者との業務連携に支障がある場合、派遣社員の交代を相談できるのでしょうか。
たとえば、「挨拶ができない」「相手によって態度が異なる」「気分によって態度が変わる」などの場合は受け手によって捉え方が異なる可能性があるため、それだけで交代を求める十分な理由となるかは、慎重に判断する必要があります。実務上は、派遣会社に相談のうえで対応を決めることになります。
また、交代を検討することになったとしても、いきなり交代ではなく、派遣会社から派遣社員に対して事実確認や改善指導を行い、一定期間様子を見たうえでどうするかを判断する場合が多いです。
一方で、「職場内で大きな声を出す」「特定の社員に対して不適切な発言をしている」「複数の社員から、業務上の連携が難しいとの相談が入っている」など、業務や職場環境に具体的な支障が生じている場合は、速やかに派遣会社へ相談し、対応策を検討することが望ましいです。業務に直接的な影響を与えていないとしても、職場に実害を与えている可能性がある状況下においては、派遣会社としても速やかな交代を含めた対応を検討する必要があります。
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派遣会社が派遣社員の交代に慎重になる理由
派遣会社が派遣社員の交代をすぐに判断・実施できない理由としては、派遣社員との雇用契約、次の就業先の調整、待機期間中の賃金・休業手当などの扱い、後任者の確保などがあります。
特に契約期間の途中で交代を行う場合、派遣先側の事情による労働者派遣契約の中途解除や、契約内容の変更として整理される場合もあります。そのため、派遣会社としても派遣先から相談を受けたからといって、すぐに交代を決定できるわけではありません。
交代した方がよい場合とよくない場合の見極め方
派遣社員を交代することにより、懸念事項が解消されると考える一方で、なかなか後任者が決まらず、業務に支障を来す可能性があることについても考慮する必要があります。特に特別なスキルが必要な業務を派遣社員に任せていた場合は、後任者の手配にどれくらい時間がかかるのか、前任者からの引継ぎはどれくらい必要か、前任者には改善すべき点があるが、それを差し引いたとしても交代対応を行うべきか、などを派遣会社と相談したうえで判断をすることが望ましいといえます。
また、派遣社員に対する期待値は妥当であったのか、派遣社員が就業をしている中で求める期待値が上がっていないか、についても見直すことが必要です。社員の代替要員として派遣社員を受け入れた場合、前任者のスキルが高く、本来であれば二名で行う業務を前任者が単独で担当していた、という実態が判明する可能性もあります。その場合は派遣社員の交代ではなく、派遣社員の増員や社員を含めた業務の割り振りを検討する方が適切といえます。
特に中小企業の場合は、大企業のように業務が細分化されておらず、一名の社員が担当する業務範囲が広い場合があり、実際に派遣社員を受け入れたことによって、その実態が判明することもあります。その場合は、まず業務全体の洗い出しを行い、そのうえで、依頼する業務範囲が変更になったため、対応できる人員への交代を派遣会社に相談する、あるいは現在の派遣社員の契約を継続しつつ、新たにもう一名の受け入れを希望する、などの対応を行うのがよいといえます。
なお、若年層の無期雇用社員を受け入れるサービスの場合は、受け入れた派遣社員の中長期での成長を期待することになるため、就業開始から短い期間でスキル不足と判断するのは受け入れた目的と異なるため、注意が必要です。派遣社員を受け入れた目的と照らし合わせ、判断するようにしましょう。
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派遣社員の交代を判断する際のポイント
派遣社員の交代を判断する際の主なポイントは次のとおりです。
- 交代を求めるだけの客観的な事実は認められるか
- 求める期待値が高すぎていないか
- 求める業務スキルは適切か
- 判断基準は受け入れた目的と合致しているか
- 職場環境に改善点はないか
- 判断するための材料は揃っているか
- 契約期間と交代を依頼する時期のバランスはどうか
- 後任者の目途は立っているか、立っていない場合はどれくらいの期間が必要と考えるべきか
まとめ
派遣社員の交代は、業務や受け入れ先の部署だけでなく、派遣会社や関係者にも影響する対応です。そのため、現場の印象だけで判断するのではなく、業務上どのような支障が出ているのか、改善の余地があるのか、交代を求める必要があるのかを整理したうえで検討することが大切です。
また、派遣社員を交代させる場合、派遣社員本人へ交代を伝えるのは派遣会社の役割です。派遣先から直接伝えてしまうと、トラブルに発展する可能性があるため、派遣会社を通じて進める必要があります。
派遣先は、派遣料金を支払って業務提供を受けている立場にあります。契約で予定された業務が円滑に進まない、職場に支障が出ている、受け入れ目的と合っていないといった場合には、遠慮しすぎず派遣会社へ相談することも大切です。
ただし、最初から交代ありきで進めるのではなく、まずは事実を整理し、派遣会社と改善指導・業務内容の見直し・追加フォロー・交代の要否を段階的に検討する形で進めるとよいでしょう。
執筆:加藤 智広
社会保険労務士/アドバンスト社労士事務所代表
最終更新日:2026年7月1日
