はじめに

派遣社員の受け入れにおいて、次のような場面で対応に迷うことはないでしょうか。

  • 派遣社員との間で、担当業務や連絡方法について認識の相違が生じている
  • 業務の進め方について、派遣社員から相談があった
  • 派遣会社から、派遣社員の就業状況について確認の連絡があった

こうした場面では、派遣社員本人の対応だけに着目せず、受け入れ側の運用や派遣会社との役割分担も含めて確認することが重要です。

派遣社員は派遣先企業(以下、派遣先)の職場で就業しますが、雇用主は派遣会社です。そのため、派遣先では、業務内容、指示の出し方、勤怠連絡、相談先などを整理するとともに、派遣会社との情報共有方法をあらかじめ確認しておくことが重要です。

本記事では、派遣社員の受け入れで起こりやすいトラブル事例と、派遣先が事前に整理しておきたい事項、トラブルが生じた場合の対応について解説します。

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業務運用に関するトラブル事例と防止のポイント

業務運用に関して生じやすいトラブルとしては、次のようなものがあります。

  • 派遣社員が始業時刻を過ぎても出勤しておらず、派遣会社、派遣先、派遣社員の間で、遅刻や欠勤時の連絡先と連絡順が整理されていなかった
  • 派遣先が依頼した業務について、派遣社員から、契約上の業務範囲に含まれないのではないかとの申出があり、認識の相違が生じた
  • 終業時間直前に追加業務を依頼したことで、残業対応の可否について認識の違いが生じた
  • 派遣社員の休暇取得に関する情報が、派遣会社と派遣先の間で十分に共有されず、就業日の認識に行き違いが生じた
  • 残業の有無について、派遣先と派遣会社で共有されている内容と、受け入れ部署での実態に差があり、相談につながった
  • 他部署に関係する業務を依頼した際、依頼経路や指示を出す担当者が明確でなく、派遣社員が誰に確認すべきか判断に迷う場面が生じた

業務運用に関する行き違いは、次のような点を確認しておくことで防ぎやすくなります。

  • 勤怠連絡の方法、連絡先、共有範囲は明確になっているか
  • 派遣会社を含め、契約上の業務範囲と実際に依頼している業務について認識がそろっているか
  • 派遣会社と合意した業務内容や就業条件に沿って業務を依頼しているか
  • 指揮命令者や相談先が明確になっているか
  • 派遣社員に判断や責任が偏りすぎていないか、指揮命令者や関係者による確認・サポートが不足していないか

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職場環境・人間関係に関するトラブル事例と防止のポイント

職場環境や人間関係に関して生じやすいトラブルとしては、次のようなものがあります。

  • 報告のタイミングや業務上の伝え方について、派遣社員と派遣先の社員との間で認識の相違が生じた
  • 派遣社員が部署内で関係者との接点を持ちにくく、誰に相談すればよいか分からない状態になっている
  • 歓迎会や懇親会への案内について、任意参加であることが十分に伝わっていなかった
  • 一部の社員の言動により、派遣社員が業務上の相談や報告を控える状態になっている

職場環境や人間関係に関するトラブルは、業務上のコミュニケーション方法、職場の慣習、伝え方や受け止め方の違いなども関係するため、事前の準備だけですべてを防ぐことは難しいのが実情です。

ただし、相談先を明確にする、歓迎会や懇親会は任意参加であり、不参加による不利益がないことを伝える、業務上の指示と職場の慣習を区別するなど、受け入れ時の対応によって行き違いを防ぎやすくすることはできます。

また、派遣社員と職場内の関係者との関わりについて、派遣先がどこまでフォローすべきか判断に迷うこともあります。職場での関係は、業務上の連携や相談のしやすさに影響する場合があります。派遣先が必要以上に私的な関係に踏み込む必要はありませんが、業務を円滑に進めるために必要な範囲で、相談先を明確にし、声をかけやすい環境を整えることが重要です。

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トラブルが生じたときに派遣先が整理したい対応

トラブルや認識の相違が生じた場合、まずは派遣先において、確認できた事実を整理します。印象や評価だけで判断するのではなく、発生日時、関係者、指示した内容、派遣社員からの申出、業務への影響、これまでに行った説明や対応などを確認しましょう。

次に、契約上の業務範囲、指揮命令者、勤怠連絡の方法、相談先など、事前に定めた内容と実際の運用にずれがないかを確認します。派遣社員本人の対応だけを問題とするのではなく、派遣先の指示方法や受け入れ体制に改善すべき点がないかを確認することも重要です。

そのうえで、派遣先だけで対応方針を決めるのではなく、必要に応じて派遣会社と状況を共有し、派遣社員本人への事実確認、業務上のフォロー、契約内容の確認などについて役割分担を整理します。

なお、苦情、ハラスメント、安全衛生、個人情報の取り扱いなどに関する事項は、通常の業務上の行き違いと同じように扱わず、社内の担当者や派遣会社と早めに連携し、必要な対応を進めることが重要です。

まとめ

派遣社員の受け入れに関するトラブルは、業務内容や指示方法に関するものだけでなく、勤怠連絡、相談経路、職場環境、人間関係など、複数の要因が重なって生じることがあります。すべての行き違いを事前に防ぐことは難しいものの、業務範囲、指示系統、勤怠連絡、相談先、派遣会社との情報共有方法を整理しておくことで、大きな問題に発展する前に対応しやすくなります。

トラブルや認識の相違が生じた場合は、派遣先だけで抱え込まず、確認できた事実、業務への影響、これまでに行った説明や対応を整理したうえで、必要に応じて派遣会社と共有し、対応方針と役割分担を確認することが重要です。

派遣社員の受け入れや派遣活用について、自社として確認すべき事項や対応方針を整理しにくい場合は、派遣先の立場から、状況、確認事項、判断材料、対応方針を整理する外部の相談窓口を活用する方法もあります。

執筆:加藤 智広
社会保険労務士/アドバンスト社労士事務所代表
最終更新日:2026年8月1日