はじめに

派遣社員の受け入れにおいて、重要な場面の一つが職場見学への対応です。人材派遣における職場見学は、派遣先企業(以下、派遣先)の事業所を訪問し、職場を見学して終了、というものではなく、派遣会社の担当者が同席のもとで、派遣社員が担当する業務内容や就業条件などの勤務に関する諸条件や実際に働く職場の確認を目的に行われます。

本記事では、職場見学の目的と流れ、面接との違いについて具体例を交えて解説します。

職場見学の実施は、派遣契約上では必ずしも行う必要はなく、派遣会社から案内された就業予定者(以下、就業予定者)の希望により行われます。職場見学を実施する目的は、就業予定者が派遣会社から説明を受けた業務内容と派遣先が想定している業務内容に相違はないか、職場環境は自分に合っているか、通勤距離や就業条件は問題ないか、といった就業予定者が仕事を受けるかどうかを決めるための材料を得ることにあります。

派遣会社としても、就業予定者のスキルと業務とのマッチング、派遣先より事前に説明を受けた業務内容や職場環境に相違がないかを再度確認できる機会となります。派遣先としても、職場見学を実施することにより、業務内容について就業予定者に直接説明できることや、実際の職場の様子を見せることで、就業開始後のミスマッチを防ぐことが期待できます。

職場見学の実施において注意すべき内容として、派遣社員を特定する行為に該当しないようにすることがあります。派遣社員の選定は、派遣会社が派遣先の業務内容や就業条件などを踏まえ、決定します。そのため、職場見学の場面が就業予定者からの見て、派遣先による面接・選考の場と誤解されることがないように注意することが必要です。

直接雇用の面接と派遣社員の職場見学の違い

直接雇用の選考過程での面接と派遣社員の職場見学の違いは、実施する目的にあります。選考過程での面接は、これまでの職務経歴やスキルの確認だけでなく、志望動機、人物像、キャリアプランなどの総合的な視点から自社の求める人材であるかどうかを判断する目的で行われます。

一方で、派遣社員の職場見学については、就業希望者が派遣契約の内容を履行できるかどうかを確認する目的で行われます。そのため、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為は禁止されています。誰を派遣するかは、雇用主である派遣会社が業務内容や就業条件を踏まえて判断することになるため、派遣先は業務内容、必要なスキル・就業条件を派遣会社に正確に伝えることが大切です。

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職場見学の流れ(業務説明~質疑応答~実際に勤務する職場の見学)

職場見学の流れは、基本的には次のとおりです。所要時間は30分程度、長い場合でも1時間程度が目安になります。

  • 派遣先より依頼する業務内容、就業条件、職場環境の説明
  • 就業予定者からの自己紹介(就業予定者より自己紹介を行いたい旨の申出がある場合)
  • 質疑応答
  • 実際に勤務する職場の見学(第三者が見学して支障ない範囲で可)
  • 実際に勤務する職場の見学を踏まえ、三者から追加の確認事項があれば対応、なければ終了

職場見学当日の流れとしては、派遣会社の担当者と就業予定者が来社、応接室や会議室などで就業予定者に業務内容を説明、質疑応答を行い、その後、実際に働く職場を案内するのが一般的です。就業予定者が就業した場合のイメージを想像できるように対応しましょう。

派遣先より依頼する業務内容、就業条件、職場環境の説明

派遣先より依頼する業務内容の説明を行います。業務内容や使用するシステム、業務を行うために必要な実務経験やスキルを説明します。併せて就業条件、職場環境の説明についても行い、就業予定者が実際に就業した場合のイメージを持てるように意識しましょう。

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就業予定者からの自己紹介(就業予定者より自己紹介を行いたい旨の申出がある場合)

職場見学時の就業予定者からの自己紹介は、必須ではありません。もし、就業予定者より行いたいと申出があった場合は実施した方がよいといえます。自己紹介では、これまでの業務経験やスキルを中心に話があることが一般的です。必要に応じてメモをとり、依頼したい業務内容や求めるスキルに合致しているかの参考にしましょう。

また、就業予定者の話を聞く際の姿勢についても大事です。就業予定者は緊張していることが多いため、普段より相手の視線や姿勢を観察しています。就業予定者は職場見学の時点では、自社と関係性のない第三者となります。お客様を迎える姿勢を心掛けることで、派遣会社や就業予定者からみた印象が良くなる可能性があります。

質疑応答① 職場見学で就業予定者から確認されやすい内容

就業予定者から派遣先へ確認を行います。職場見学の場面で確認されやすい内容は次のとおりです。

  • 一日の業務の流れ
  • 一日の業務の処理件数
  • 電話対応や来客対応は一日あたりの件数
  • 繁忙期の有無
  • WordやExcel、PowerPointなどのOfficeソフトの使用頻度
  • OJTや初期教育のスケジュール
  • 職場の雰囲気
  • 職場の年齢層や構成
  • 休憩時間の過ごし方
  • 服装規定

質疑応答② 業務内容・就業条件に関して確認しておきたい内容

派遣先から就業予定者に確認する場合、確認する内容を業務内容や就業条件に関係する範囲に留めることが必要です。確認する内容が就業予定者や派遣会社から見て、「選考や評価に関係するのでは」と受け取られないように注意しましょう。

  • 今回の業務に近しい業務経験はあるか
  • 苦手なイメージを持っている業務はあるか
  • 複数の社員とやりとりがある業務の経験やコミュニケーションは得意か
  • 電話対応やメール対応の経験はあるか
  • WordやExcelなどのOfficeソフトの使用経験はあるか、ある場合はどのような業務で使用したか
  • 残業対応は可能か
  • 勤務いただく場合に派遣先として配慮が必要なことはあるか

質疑応答③ 派遣会社より派遣先への確認(曖昧な個所や気になる内容がある場合)

派遣会社より派遣先に確認が入る場合があります。派遣会社が業務へのマッチング度などから派遣する社員を決めることになるため、必要な情報や不足している情報がある場合は確認が入ります。派遣先としても就業開始後のミスマッチを防ぐため、派遣会社からの確認に対しても丁寧に答えるようにしましょう。

実際に勤務する職場の見学(第三者が見学して支障ない範囲内で可)

質疑応答を終えたあとは、実際に勤務する職場を見学します。見学の際に職場の雰囲気や休憩室、ロッカー、更衣室などの福利厚生についても説明します。就業予定者が実際に就業した場面を想像できるように案内をするようにしましょう。

また、職場見学の際にフロアで就業している社員が就業予定者を見て怪訝な顔をする、普段とは異なる姿勢を見せることは避けたほうが無難です。就業予定者が委縮したり、就業開始後の雰囲気と相違が起きるなどのミスマッチにつながる可能性があります。普段通りの姿勢、就業予定者に対してはお客様が見学に訪れたというイメージで対応するようにしましょう。

実際に勤務する職場の見学を踏まえ、三者から追加の確認事項があれば対応、なければ終了

実際に勤務する職場の見学を踏まえ、追加で確認したい事項はないかの確認を就業予定者、派遣会社に行い、なければ職場見学終了となります。職場見学終了後、エレベーターホールまで見送るかどうかについては、会社のスタンスによりますが、お客様を迎えた際と同様の接し方を行うのが自然な形といえます。

職場見学で派遣先が説明しておきたいこと

職場見学で派遣先が説明しておきたい内容は、次のとおりです。

  • 業務内容
  • 就業条件
  • 職場環境
  • 求めるスキル
  • 就業した場合のOJTや教育体制

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職場見学で避けたい確認・発言や留意事項

職場見学の際に不適切と捉えられる可能性のある確認事項は次のとおりです。職場見学は面接とは異なり、派遣先が派遣社員を評価するために行うものではありません。面接・選考と誤解されることのないよう、注意しましょう。

  • 最寄りの駅と通勤時間を教えてください
  • 前職の退職理由を教えてください
  • 正社員で仕事を探していないのですか?
  • ご結婚はされていますか?
  • お子様はいらっしゃいますか?
  • 家族構成を教えてください
  • 志望動機を教えてください
  • 長所と短所を教えてください
  • 学歴は大卒ですか?

たとえば、通勤は支障ないかを確認したい場合は、就業予定者に詳細な住所や最寄駅を直接聞くのではなく、派遣会社を通じて「就業場所、始業時刻に対応可能か」と確認する形が望ましいです。

個人情報に関する事項は特定する行為に該当する可能性があることに留意

個人情報に関する確認は、派遣社員を特定する行為に該当する可能性があるため、避けた方が無難です。個人情報の具体例としては、氏名、年齢、住所、学歴、これまでに就業していた企業名などが挙げられます。

また、健康状態や家族構成などについても控えるようにしましょう。業務上で確認が必要な場合は、あらかじめ派遣会社に確認を取り、必要な事情を説明し、就業予定者より了承を得たうえで確認するようにしましょう。

依頼する業務に関係のない確認は行わない

職場見学は依頼する業務に対するマッチングを確認する場面です。そのため、依頼する業務に関係のない確認は行わないようにしましょう。たとえば、経理業務を依頼したい場面で営業経験はありますかと確認した場合、就業予定者は意図がわからず、戸惑います。

また、保有資格について確認をする場合についても、業務を行うために必要な能力をはかるものであれば可能ですが、関係性のないものについては行わないようにしましょう。

採否の決定権を派遣先が持っていると誤解される発言は行わない

派遣先が派遣社員を決めると捉えられる発言も行わないようにしましょう。「あなたを採用したい」「弊社で就業してほしい」「将来は正社員を目指してほしい」といった内容は派遣先が選考している印象を与えかねないため、控えた方が無難です。

職場見学後に採否や人物評価を伝えない

職場見学後に、派遣先が就業予定者について「感じがよかった」「今回は見送りたい」「別の方にしてほしい」など、採否や人物評価に近いコメントを派遣会社に伝えることは避ける必要があります。職場見学は、派遣先が就業予定者を選考する場ではありません。業務内容、職場環境、就業条件を説明し、就業予定者がその仕事を受けるかどうかを判断するための機会です。そのため、見学後に印象や適性を評価するような発言をすると、派遣労働者を特定する行為と受け取られる可能性があります。

一方で、実務上では、職場見学後に派遣会社から「業務内容や就業条件について認識の相違はありませんか」「追加で確認したい点はありますか」と確認されることがあります。その場合も、就業予定者本人への評価のための確認ではなく、業務内容、必要なスキル、就業条件、職場環境など就業に関係する内容について、認識の相違がないかを確認したいという観点で伝えることが大切です。

たとえば、「今回の業務ではExcelでの集計作業が多いため、その点について派遣会社側でも改めて確認をお願いします」「電話対応の件数が多い業務であることを再度説明しておいてください」のように、人物評価ではなく、業務条件や確認事項として伝える形が望ましいといえます。

まとめ

職場見学は、派遣先・派遣会社・就業希望者の三者にとって、就業開始後のミスマッチを防ぐための重要な機会です。

派遣先は、紹介予定派遣ではない一般派遣契約の場面での職場見学の際は、候補者を面接・選考する場ではないことを理解したうえで、業務内容、就業条件、職場環境を正確に説明するとともに、確認事項や発言が派遣労働者を特定する行為と受け取られないよう注意する必要があります。

また、職場見学後に派遣会社へ感想や確認事項を伝える場合も、就業予定者への評価ではなく、業務内容・就業条件・職場環境に関する確認として整理することが大切です。口頭・メールのいずれでやりとりする場合も、派遣先として何を確認したいのかが分かる形で伝えることで、後日の認識の相違を防ぎやすくなります。

派遣社員の職場見学対応や、派遣先として確認してよい内容を整理したい場合は、必要に応じてご相談ください。