
派遣先責任者とは?
派遣先企業が押さえておきたい実務上のポイント
はじめに
派遣社員を受け入れる際は現場での指揮命令系統だけでなく、勤怠状況の確認、休憩時間の取得状況、派遣会社との連絡・調整などを円滑に行える体制を整えておくことが重要です。こうした体制を整えるうえで、中心的な役割を担うのが派遣先責任者です。
本記事では、派遣先責任者の役割と派遣先企業(以降、派遣先)が押さえておきたい実務上のポイントを整理します。
派遣先責任者とは
派遣先責任者とは「派遣先において派遣労働者に関する就業の管理を一元的に行い、適正な派遣就業を確保するために選任される者です」と労働者派遣法第41条で定められています。実務上では派遣契約を締結する際に、派遣先責任者を選任し、契約書へ氏名・役職・連絡方法などを記載する必要があります。契約書に名前があるだけの存在ではなく、実際に派遣労働者についての知識と対応ができる社員を設定することが望ましいでしょう。
派遣先責任者の役割
派遣先責任者の役割は次の通りです。
- 労働者派遣契約の内容が守られているかの確認
- 適用される法規定や派遣契約の内容などの関係者への周知
- 派遣受け入れ期間の管理
- 派遣先管理台帳の管理
- 派遣社員からの苦情処理
- 派遣先における均衡待遇確保に関する対応
- 安全衛生の確保に関する派遣会社との連絡・調整
- 教育訓練実施への協力
労働者派遣契約の内容が守られているかの確認
派遣会社との契約内容が守られているかを確認することも役割の一つです。特に就業条件、契約期間、業務内容、就業場所、就業時間などについて、契約内容と実際の運用にズレが生じていないかを確認し、相違がある場合は早めに派遣会社と調整することが重要です。
適用される法規定や派遣契約の内容などの関係者への周知
派遣社員に関する法規定、派遣契約の内容、派遣会社から受けた通知を指揮命令者などの関係者に周知します。
派遣受け入れ期間の管理(抵触日対応)
派遣法で定められている事業所単位の期間制限と個別単位の期間制限の管理についても派遣先責任者の役割です。
派遣先管理台帳の管理
派遣先管理台帳は、派遣社員ごとの契約内容や勤務状況を記載する書面です。派遣先は派遣先管理台帳を作成・保管し、記載内容の一部を派遣会社に通知することが義務付けられています。
派遣社員からの苦情処理
派遣先責任者は派遣社員から苦情を受けた場合に対応する責任を負います。苦情を受けた場合は派遣会社と連携し、適切な対応をすることが必要です。また派遣契約では派遣先苦情申出先についても選任をする必要があります。派遣先責任者と兼務することも可能ですが、もし別の社員が担当している場合は派遣先苦情申出先とも連携の上で対応するようにしましょう。
派遣先における均衡待遇確保に関する対応
2020年4月に同一労働同一賃金が施行されたことにより合理的な理由がない場合、正社員・パート・派遣社員と雇用形態にかかわらず、同じ待遇にする必要があります。派遣社員の待遇に関しては、派遣会社が適切に対応できるよう、派遣先として必要な情報提供や社内調整を行う場面があります。派遣先責任者は派遣会社から確認を求められた場合に、関係部署と連携して必要な情報を整理する役割を担います。
安全衛生の確保に関する派遣会社との連絡・調整
派遣社員の雇用主は派遣会社ですが、就業先は派遣先になるため安全衛生の管理については派遣先が、一般的な健康管理については派遣会社が責任を負います。派遣先責任者は安全衛生に関して派遣会社との連絡調整を担当します。
教育訓練実施への協力
派遣社員が円滑に業務を行えるよう、派遣会社から求めがあった場合などには、教育訓練や業務上必要な説明について協力が求められることがあります。派遣先責任者は現場担当者や関係部署と連携し、必要な説明や受け入れ体制を整える役割を担います。
派遣先責任者と指揮命令者の違い
派遣先責任者と指揮命令者の違いについて整理します。派遣先責任者は派遣契約全体の管理を行う役割を担うことになり、派遣先会社全体の派遣スタッフの受け入れや就業状況の管理を行います。一方で、指揮命令者は各派遣社員に対して現場での業務指示や管理を担当します。派遣先責任者が派遣社員全体の管理、指揮命令者が個別の派遣社員の管理が役割の違いです。
また、派遣先責任者と指揮命令者を兼務することは可能です。兼務するメリットは指揮命令者の立場から、より身近な視点で派遣社員を管理できることがあります。一方で、全体を管理する面では同じ現場にいない派遣社員に目を向けるという点が弱くなる可能性があります。
実務上では、中小企業は兼務することが多いですが、大企業は兼務していないケースが多いです。会社の規模や各担当者の知識や経験などから適任者を選任することが望ましいです。
派遣先責任者を決めるときのポイント
派遣先責任者については、法律上の資格が定められているわけではありません。ただし、厚生労働省の指針では、派遣先責任者の選任に当たって、次のような点が示されています。
- 労働関係法令に関する知識を有する者であること
- 人事・労務管理等について専門的な知識、または相当期間の経験を有する者であること
- 派遣社員の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者であること
派遣先責任者は人事労務部門の責任者と役職を基準に設定する派遣先もありますが、労務関係の知識を有することを厚生労働省の指針で求められていることから、人事異動により営業職から人事労務部門の責任者に転任した場合などは適任者であるかどうか検討する必要があります。派遣先責任者として必要な知識を整理する方法として、派遣先責任者講習を活用することも考えられます。
また、派遣会社とのやりとりやトラブル発生時の対応、受け入れ期間の管理などの法的な要素への理解も求められることにも留意が必要です。実務上では、決裁権を有する方が選任される場合が多いです。トラブル発生時の対応方針の決定や派遣会社との協議が必要な場合を想定して選任することが望ましいでしょう。
まとめ
派遣先責任者には自社内の調整、派遣会社とのやりとり、派遣社員からの相談・苦情への対応など幅広い役割が求められます。「責任者だから部長でよい」「指揮命令者と同じ人にしておけばよい」と形式的に決めるのではなく、実際に対応が必要になる場面を想定し、派遣会社や現場担当者と連携できる人を選任することが重要です。
派遣先責任者の役割が曖昧なままだと、勤怠管理、契約内容とのズレ、苦情対応、派遣会社への共有漏れなどにつながる可能性があります。派遣社員を受け入れる際は、誰がどの役割を担うのかをあらかじめ整理しておきましょう。
